国の子育て支援策と脱炭素政策の一環として、省エネ性の高い住宅の取得(注文住宅・新築分譲住宅)や省エネリフォームに対して補助金がもらえる「子育てエコホーム支援事業」が実施されている。どんな人や住宅が対象になるのか。いくらもらえるのか。制度の概要や具体的な事例を解説しよう。
子育てエコホーム支援事業は、子育て世帯や若者夫婦世帯などを対象に、省エネ性の高い住宅の取得や省エネリフォームに対して補助金を交付する制度のこと。エネルギー価格など物価高騰の影響を受けやすい世帯に対して省エネ住宅への投資を支援することで、国が目標とする2050年のカーボンニュートラルの実現をめざすものだ。
この制度は注文住宅の新築・新築住宅の購入と住宅リフォームに区分されている。このうち注文住宅の新築・新築住宅の購入は子どものいる世帯や若い夫婦のみを対象としているが、住宅リフォームについてはそれ以外の世帯も対象となる。
注文住宅を新築したり、新築住宅を購入する際に補助金がもらえるのは、子育て世帯と若者夫婦世帯に限られる。子育て世帯とは2023年4月1日時点で18歳未満、つまり2005年4月2日以降に生まれた子がいる世帯。若者夫婦世帯とは夫婦のどちらかが2023年4月1日時点で39歳以下、つまり1983年4月2日以降生まれの世帯だ。
なお住宅リフォームの場合は世帯の年齢制限などはないが、子育て世帯や若者夫婦世帯の場合は補助金額が多くなる。
注文住宅の新築や新築住宅の購入でもらえる補助金額は、長期優良住宅が100万円、ZEH水準住宅が80万円だ。ただし立地する区域が市街化調整区域で土砂災害や浸水のリスクが大きい場合は補助金額が半額になる。
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リフォームでもらえる補助金額は工事内容によって変わるが、世帯や種別によって上限額が決められている。例えば子育て世帯や若者夫婦世帯が既存住宅を購入してリフォームする場合は上限60万円、その他の世帯が長期優良リフォームを行う場合は上限30万円といった具合だ。
事業の対象となる住宅の販売や工事の施工をする会社は、あらかじめ事務局に事業者登録が必要だ。登録事業者は国の「住宅省エネ 2024キャンペーン」HPから検索できる。
対象工事の着手期間は2023年11月2日以降。交付申請期間は予算上限に達するまでで、遅くとも2024年12月31日までとなっている。
支援事業には予算があるので、枠を使い切った場合は早めに申請が締め切られる場合がある。予算があとどのくらい残っているかは子育てエコホーム支援事業のホームページに掲載されているので、確認のうえ早めに申請しよう。
新築住宅で補助金を受けるには、長期優良住宅またはZEH水準住宅の基準に適合することの証明を、登録住宅性能評価機関などの第三者機関から受ける必要がある。
住宅は所有者(建築主)が自分で居住するもので、住戸の床面積が50m2以上240m2以下であることが要件。また、災害リスクの高い以下の区域に原則立地しないことも要件となる。
新築住宅については、後に述べる「先進的窓リノベ2024事業」、「給湯省エネ2024事業」、「賃貸集合給湯省エネ2024事業」も含め、同一の工事や設備において国による他の補助金とは併用できない。ただし自治体の補助金とは併用できる場合があるので、各自治体のHPなどで確認しよう。
注文住宅の建築で補助金を受けるには、登録事業者と工事請負契約を結び、着工してから補助金の交付申請をすることになる。事務局から交付決定の通知を受け、竣工・引き渡し後に完了報告をすると、事業者が指定した口座に補助金が振り込まれる。
なお、補助金の交付申請は遅くとも2024年12月31日までが期限だが、その前の「交付申請の予約」は遅くとも2024年11月30日までに手続きする必要がある。
これらの手続きのうち、注文住宅の発注者(施主)がしなければならないのは工事請負契約だけ。その他の手続きは依頼した事業者がしてくれるので確認すればよい。
まず対象となる住宅は床面積や築年数は問われず、賃貸住宅でもよい。
対象となるリフォーム工事は以下の8種類。そのうち「開口部の断熱」「外壁等の断熱」「エコ住宅設備の設置」のいずれか1つは必須だ。補助額が合計5万円以上で補助対象となる。また、前述の上限額の範囲内であれば、同じ住宅で複数回リフォームする場合も対象となる。
①開口部の断熱改修 | いずれか必須 | 補助額が合計5万円以上で補助対象 |
②外壁、屋根・天井または床の断熱改修 | ||
③エコ住宅設備の設置 | ||
④子育て対応改修 | Aと同時に行う場合のみ補助対象 | |
⑤防災性向上改修 | ||
⑥バリアフリー改修 | ||
⑦空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置 | ||
⑧リフォーム瑕疵保険等への加入 |
リフォームの補助金額は工事内容によって細かく分類されており、それらの合計額が上限額の範囲内で補助される。
例えば子育て世帯が一戸建てを長期優良リフォームした場合の補助金額の例が下の表だ。開口部の断熱改修として8カ所の窓に内窓を設置し、エコ住宅設備として高効率給湯器を設置。さらに子育て対応改修としてビルトイン食器洗機を設置し、キッチンセットを交換して対面化した場合、補助金額の合計は35万7000円となる。
■リフォーム工事の補助金額例 世帯:子育て世帯 種別:長期優良リフォーム 住宅:一戸建て
8 | 216,000円 |
1 | 30,000円 |
1 | 21,000円 |
1 | 90,000円 |
357,000円 |
リフォームの場合は、後述する「先進的窓リノベ2024事業」「給湯省エネ2024事業」「賃貸集合給湯省エネ2024事業」の補助金とは併用可能(同一のリフォーム工事を除く)。その場合は上記Aの必須工事を含んでいるものとされるので、Bのいずれかの工事だけでも補助金が受けられる。また、前出の3つの事業のいずれかにおいて交付決定を受けている場合は、子育てエコホーム支援事業で申請する補助額の合計が2万円以上(通常は5万円以上)であれば補助対象となる。
なお、リフォームの補助金を受けた人は、同じ住宅や他の住宅で子育てエコホーム支援事業の新築住宅の補助金を受けることはできない。また、同一のリフォーム工事について国の他の補助金を併用することはできないが、自治体の補助金については併用できる場合がある。
リフォームで補助金を受けるには、登録事業者と工事請負契約を結び、工事に着手してから補助金の交付申請を予約することになる。工事が完了し、引き渡しを受けてから交付申請をし、事務局から交付決定の通知を受け、事業者が指定した口座に補助金が振り込まれる。
なお、補助金の交付申請は遅くとも2024年12月31日までが期限だが、その前の「交付申請の予約」は遅くとも2024年11月30日までに手続きする必要がある。
これらの手続きのうち、リフォームの依頼主がしなければならないのは工事請負契約だけ。その他の手続きは依頼した事業者がしてくれるので確認すればよい。
子育てエコホーム支援事業は国の「住宅省エネ2024キャンペーン」の一環として実施されている。キャンペーンでは「先進的窓リノベ2024事業」「給湯省エネ2024事業」「賃貸集合給湯省エネ2024事業」も実施されており、リフォームの場合はいずれも併用が可能だ。
住宅の窓のガラス交換、内窓設置、外窓交換による断熱リフォームを実施すると補助金がもらえる制度。窓工事と同時に行うドア交換も対象だが、製品の断熱等の性能や工法などにより、補助金額が異なる。
補助金額の上限:1戸当たり200万円
事務局に登録された事業者と工事請負契約を結び、交付申請期限(遅くとも2024年12月31日まで)に申請することで補助金を受けられる。
新築住宅や既存住宅(リフォーム)に高効率給湯器を設置すると補助金がもらえる制度。
以下(1)~(3)の補助額の合計が補助される。
事務局に登録された事業者と工事請負契約を結び、交付申請期限(遅くとも2024年12月31日まで)に申請することで補助金を受けられる。
賃貸住宅のオーナーなどが賃貸住宅に小型の省エネ型給湯器を設置すると補助金がもらえる制度。補助対象となる給湯器はエコジョーズとエコフィール。
補助金額:追い焚き機能の有無により1住戸1台当たり5万円または7万円
事務局に登録された事業者と工事請負契約またはリース契約を結び、交付申請期限(遅くとも2024年12月31日まで)に申請することで補助金を受けられる。
紹介した補助金の予算には上限額があり、申請額が上限に達すると終了となる。申請を考えている人は注意が必要
使いたい補助金がある場合は、工務店や施工会社に早めに相談しよう